マインドフルネスと瞑想の神経メカニズム:神経画像研究からのエビデンス

World J Radiol 2014 July 28; 6(7): 471-479

Neural mechanisms of mindfulness and meditation: Evidence from neuroimaging studies

William R Marchand

 

種類:レビュー論文
方法:PubMedによる検索。検索用語は、マインドフルネス、瞑想、神経画像、MRI、fMRI、メカニズムなど。

 

マインドフルネスによって変化する脳野

MRIによって、形態計測morphometry、異方性比率fractional anisotropy、皮質フォールディングgyrificationなどが調べられていた。マインドフルネスや瞑想によって変化が調べられた脳野はTable2のとおり。

 

マインドフルネスのメカニズムに関係する脳野

脳の機能画像による研究が行われているものの、いろいろな方法が取られていて、正確な結果をまとめることは困難だ。しかしながら、以下のTable3にある脳野がマインドフルネスのメカニズムに関与していることが示唆されている。 

 

 

※後ろについている番号は、文献番号。数が多いほど、今回のレビューでの研究が多い。
【略記】
MBSR Mindfulness-Based Stress Reduction マインドフルネスを基盤とするストレス減少
MBCT  Mindfulness-Based Cognitive Therapy マインドフルネスを基盤とする認知療法
SAD  Social anxiety disorder 社会不安障害
GAD  Generalized anxiety disorder 全般性不安障害 
VLPFC  ventrolateral prefrontal cortex 腹外側前頭前野
DLPFC  dorsolateral prefrontal cortex 背外側前頭前野
ACC  anterior cingulate cortex 前帯状皮質
PCC  posterior cingulate cortex 後帯状皮質
CMS  cortical midline structure (大脳)皮質正中内側部構造
DMN  default mode network デフォルト・モード・ネットワーク
vPMC  ventral posterior medial cortex 腹側後頭葉内側皮質
TPJ  temporoparietal junction 側頭頭頂接合部
SID  stimulus independent thought 刺激入力に依存しない思考
IA  interoceptive attention 内受容感覚な注意
DMPFC  dorsomedial prefrontal cortex 背内側前頭前皮質

マインドフルネスの認知的、感情的利点に関する神経メカニズム

マインドフルネスは、注意、感情調節、思考パターンに影響することが、多くの文献によって指摘されている。

 

注意 attention

3つの神経ネットワーク、注意喚起alerting、配向orienting、実行(執行)executiveは、注意プロセスにおいて特別な役割があると考えられている。
注意喚起ネットワークはDLPFC、ACCを含む右前頭葉と右頭頂皮質が関与する、タスク特化型注意喚起task-specific alertness、注意に関する結合attentional engagementを変調させる。
配向ネットワークは、非常に多くの感覚刺激から正確な情報を選択する、刺激選択を制御している。このネットワークは、前頭眼運動野frontal eye fields、上頭頂皮質superior parietal cortex、上丘superior colliculus、側頭頭頂接合部Temporal parietal junctionを含む。
執行制御回路は、注意の制御を仲介する。この機能は、トップダウン制御のほか、計画と意思決定の計算、思考と感情の規制とエラー探索の軋轢を解決したり、モニタリングしたりする。脳野としては、ACC、外側前頭皮質lateral frontal cortex、大脳基底核basal gangliaが実行制御プロセスに関与している。
MBSR研究(Mindfulness-Based Stress Reduction)では、社会不安障害における自己についての否定的なビリーフへの応答を制御することに注意する神経プロセスを調べた。MBSRは、否定的感情を減らし、頭頂野を変調させる注意を活性化させた。この研究では、メタ注意meta-attention、マインドワンダリング、DMN(the default mode network活性に関連する影響を調べるために、禅瞑想者のグループと、呼吸に集中するという素朴な瞑想をする対照群からfMRIのデータを集めた。
 その結果、vPMCの活性化上昇は、瞑想者で低く、注意を持続させることと有意に関連していた。先行研究では、注意には、側頭における右TPJとvPMCの連携の度合いが関連していること、瞑想者とそうでない人のStroop TaskのfMRIを比較した結果、瞑想者でない人は、不適合な状況において、側頭中間、前頭葉内側、中心前回と後回、大脳基底核の活性が上昇したことが報告されている。この結果から、瞑想は、注意を持続させ、刺激を制御することで、効力感を高めるのだろうと推測されている。
 別の研究では、瞑想に関係する4つの認知サイクルインターバル:マインドワンダリング、自己のマインドワンダリングへの注意喚起、注意の変調、注意の持続に関するモデルを調べた。14人の被験者は、マインドワンダリングから自己の呼吸に意識が戻った時にボタンを押すように指示され、その間、脳スキャンした。結果、マインドワンダリングの間はデフォルトモードに関連する脳野が活性化され、マインドワンダリングの注意喚起の時は、セリエンス(salience)ネットワークが活性化されていた。注意の変調から持続にかけては、最終的に実行ネットワークが活性化された。
 以上から、注意に関連する神経メカニズムには、注意関連の頭頂皮質、vPMC、TPJ、CMS、側頭皮質、感覚運動皮質、大脳基底核が含まれることが示唆されている。マインドフルネスは、三つの注意ネットワーク全てに影響しているようだ。マインドフルネスは、一般体感的な注意プロセスgeneral attention processの訓練に加えて、内受容性注意 (interoceptive attention: IA)をその瞬間に起きる内臓体感へ拡張していく。マインドフルネスの訓練は、内受容性注意の間、島前方の活性を促し、背内側前頭皮質の関与を減少させる、同時に背内側前頭皮質と島の機能的結合を変化させる。
 以上から、マインドフルネス訓練は、3つの注意ネットワーク、島における神経プロセスを変化させるようだ。その結果として、一般体感、内臓体感それぞれにおける注意を改善する。

 

自動思考と自己言及(参照)的思考 (self-referential thinking)

マインドフルネスがDMN神経プロセスに影響しているという説得力のある根拠はいくつもある。このネットワークの変容が自動思考の経験の客観化において重要な役割を担っているようだ。内側皮質の多くは、CMS として知られている機能的ユニットとして機能する。これは、DMNの一部でもあり、刺激入力に依存しない思考(SIT)において重要な役割を担う。CMSの活性度が減ると、SITの活性度も減る。つまりCMSは、マインドフルネスによって変容する自動思考に関連するDMNの特異的な部分かもしれない。
 自己参照的思考は、気分障害や不安障害でよく見られる自動認知のタイプである。CMSは自己参照思考に関連している。社会不安障害に対するマインドフルネスを基盤とするストレス減少(MBSR)の研究では、介入前後での神経と行動反応をfMRIで調べた。MBSRは、自己に対する肯定的な観点を増加させ、否定的な観点は減少させた。MBSRは自己否定的な観点ではPCCの脳反応を増加させた。否定的な自己観点の時のDMPFCの活性化は、MBSRによって増加し、社会不安を減少させ、マインドフルネスを拡張させることに関連していた。これらのことから、マインドフルネスは、DMN領域やCMSに影響を与えることによって、少なくともある程度は、望ましくない習慣的な自己観点を、特異的に減衰させる。

 

感情の調整 (emotional regulation)

マインドフルネスが、どのように感情調整を促進するかという根拠となる研究は数多くある。悲しみに関するfMRIを用いてマインドフルネス訓練(MT)の効果を対照群と比べた研究では、悲しみによって、CMSにおける自己参照的思考に関係する領域が活性化された。MT参加群では、顕著な活性パターンがあり、身体感覚に関連する右半球領域に影響が広がっていた。否定的な感情を引き起こす写真を見せられた時の短時間マインドフルネスの効果をfMRIで調べた研究では、嫌な写真を見せられる時に、マインドフルネス介入は前頭前皮質の活性化を促進した。嫌な刺激の知覚は扁桃体や海馬傍回の活性化を減衰させた。双極性障害に対するfMRIを使ったMBCTの研究では、治療群で不安やワーキングメモリ―の感情調整、空間記憶、言語の流暢さが改善した。血中酸素濃度依存性シグナルは内側前頭前皮質と頭頂葉で増加した。また、内側前頭前皮質におけるシグナルの増減とマインドフルネスとの関連を明らかにした。全般性不安障害に対するMBSRの研究では、扁桃体と腹外側前頭前野(VLPFC)の活性化が見られ、介入前後で扁桃体とPFC領域の機能的接続が増加した。VLPFC活性化と扁桃体-前頭前野接続の変化はベック不安尺度(Beck Anxiety Inventory)の得点の変化と関連していた。また、感情的な刺激に対する神経反応をfMRIを使って調べた別の研究では、熟練した瞑想者と瞑想の初心者では、嫌な写真、好きな写真、中立的な写真を見せられた時の反応が異なった。熟練者の群では、マインドフルネスは、DMNの不活性化が見られたが、感情に関連する脳領域の反応に変化はなかった。瞑想初心者では、マインドフルネスは、感情的なプロセスの時に左の扁桃体の活性を減少させた。長期にわたるマインドフルネスの実践は、感情の耐性を促進し、現在への注意を促進することで、感情的な反応を減少させると結論づけられている。季節性感情障害(seasonal affective disorder)に対する、感情反応と自己への否定的なビリーフを調整することを調べた研究では、MBSRによる呼吸に集中する作業の間(a breath-focused attention task)、不安やうつ症状、自己効力感を改善した。対象者は、否定的な感情や扁桃体の活性が減少し、注意に関連する脳領域の活性が増加した。
 以上から、マインドフルネスは、感情調整に関連する外側前頭野CMS/DMN、内受容的な注意(IA)、扁桃体のプロセスを変容させることが示唆されている。興味深いことに、これらのプロセスは、瞑想の熟練度によって変化する。

 

まとめ

これらの研究によって、マインドフルネスに関連する神経プロセスの理解が深まる。一方で、限界もある。これらの研究は、デザインがバラバラで対象も様々なため、比較が難しかったことだ。